EasyToon(イージートゥーン)上級講座



+ LESSON-1 +

動きにタメを効かせよう

「タメ」というのは、動きの早さに強弱をつけることです。





このアニメは、両方ともシッポの動きを同じ6枚で描いていますが
上は均等に動かして、下はタメを効かせています。

通常、タメを効かせた方が自然で力強い動きが表現され、見栄えが良くなります



(各コマの比較)
均等な動き タメを効かせた動き
10

タメを効かせた方は、動きの真ん中部分(最も早く動いている部分)が省略されています。

一般的にこの方が、スピード感が出て、見ていて気持ちよい動きになりますね。

ただこういうタメの効いた動画の描き方は、作品のジャンルや、そのシーンの演出により
やって効果が上がる場合と、逆に下がる場合があります。

どんな場合でもタメた動きをさせる方が良い、というものではないのです。

動物の動きや、アクション物などではタメは必須と言えますが
昔のロボットのような動きなら、タメはほとんど無い方が効果が上がりますし
そもそもタメをやりすぎると、不自然になってしまいます。

『これが正解の動き』というものは無い、ということをしっかり理解して下さい。



以下に、某アニメスタジオの新人教育で使われていた作画(動画)に関する言葉を紹介しますので
参考にして下さい。




+ 動画の描き方について +
 
動画のタイミング等の細かい説明は、
言葉で言って理解出来るものではありません。
いろんな種類のアニメを見て、自分で実際に試行錯誤しつつ描いてみて
研究するしかないのです。

ただ、はじめて動画を描く人に特に注意して欲しいことがあります。
それは「動画を描き過ぎない」ということです。
慣れない人は、動きの間の絵をたくさん描こうとします。
動画を細かく割ると確かになめらかな動きにはなるのですが、
非常にゆっくりとした、モタついた動きになってしまうのです。
ですから、まず動きの最初と最後の絵、つまり原画を描き、
その動きが何秒かかるのかを計って決め、
それにより何枚の動画が必要なのかを計算して描くようにして下さい。
そして特に早い動きの場合は、中間の動きをすべて省略してかまいません。

また、横の動きよりも、手前から奥へ、奥から手前へといった、
いわゆる前後の動きを多くするように心がけて下さい。
横の動きばかりでは、いかにも平面的なおもしろ味のない画面に
なってしまいます。

さらにこれは乱暴な言い方ですが、
「どうせ1枚の動画は0.1秒くらいしか映らない」
ということも覚えておいて下さい。
つまり1枚をバカていねいに描くよりは、多少手をぬいても、
数多くの枚数をこなした方がいいということは言っておきます。
最初から最後まで絵を均等にがんばるより、
省略できる部分は思い切り手をぬき、
キメのシーンを全力でやった方がはるかに効果が上がるものなのです。

 



蛇足

究極のタメを効かせる方法として、『動画をまったく描かない』という方法があります。

これはすべての動きを原画のみで繋ぎ、中割りをやらないという方法なのですが
カタルシスに溢れているようなスピード感のあるアクションシーンを描きたい場合に使うと
特に効果があります。

この具体的な例として、「鋼の錬金術師」(BSアニメ夜話:氷川竜介のアニメマエストロ)
を参照してみて下さい。



ちなみに・・・

その例として『太陽の王子ホルス』でヒルダが剣を振るシーンなんて言うと
思いっきり歳がバレるのでやめましょう。orz




+ LESSON-2 +

リアルとデフォルメ(誇張)

アニメの映像に、『存在感』があるのはとても良いことです。
しかし、ただリアルにすれば存在感が出る、というものでもありません。

リアルな『だけ』の映像は面白味が無く、本物っぽいんだけど妙な違和感を感じる
観ていてつまらない映像になってしまいかねません。




このイラストでは、車がまるで生きているように描かれています。

後輪が、動物が後ろ足でふんばってるかのように後ろに歪んでいますが
実際には、こんな形ではなく前側に歪むのが本当です。




力は軸にかかっているのですから、こうなるのが当然です。

でも感覚的に力が後ろにかかってるのを表現するには
やっぱりタイヤの後がひずんでるほうがさまになり、自然に見えます。

車がまるで生きていて、後ろにひっくり返りそうになるのを
必死でふんばっているように見えませんか?(^^;

なんでもリアルにすれば存在感が出て自然に見えるわけではない
ということを覚えておいて下さい。

特に、観ていてワクワクドキドキするような爽快で楽しい動きをさせたいなら
デフォルメ(誇張)は重要です。

まぁ、あまりやりすぎると昔のディズニーみたいな動きになってしまいそうですが。(^▽^;




+ LESSON-3 +

左右反転を活用しよう

上級講座で解説した『左右反転』機能ですが、
これはただ絵を反転させたいときだけではなく、別な使い方があります。



この左右反転させたイラストを見比べてみて下さい。
どちらの人物も、まったく不自然さなく見えます。

「当然だろう?」と思われるかもしれませんが、少しでも絵心がある方なら
これがどれほどすごいことか分かると思います。

通常、素人が描いた絵は、どうしてもデッサンがおかしくなってしまい
自分では完璧に描けたつもりの絵を後日冷静に見て
鬱になった経験がある人も多いと思います。(私です。orz)

これを簡単に防止するのが、『左右反転』です。

描いた絵を左右反転してみると、デッサンがおかしい部分がよく見えるのです。

プロの漫画家さんも、よく原稿を裏からすかして見て
デッサンの狂いがないか確かめています。

みなさんも絵を描いたら、まず
『ctrl + shift + X』をやって左右反転してみて
チェックする習慣をつけましょう。




+ LESSON-4 +

画面構成(シーンのつなぎ方)

イラスト中心で描いていた方がアニメに挑戦したとき、一番苦しむのが
画面構成(各シーンのつなぎ方)だと思います。

ストーリーを分かりやすく見せるには、どんなシーンをどんなカメラアングルで
つなげていけばよいのでしょうか?

それを理解するには、まず「観客がシーンが切り替わったときどうなるか」を
考えてみる必要があります。

アニメの最初のシーンとか、場面が大きく変わったとき、
観客は、そこがどんな場所で何が起きているのか、当然ですがまったく分かりません。

もし、「設定知ってるオレが分かるから、みんなも分かるだろう」、と
新しい場面の説明をやらずに、いきなりストーリーを始めてしまったら
観客はとりのこされてしまい、「わけがわからない」と言われる作品になってしまいます。

残念ですが、個人製作アニメには、こういうものがたくさんあります。

ある意味、くどいくらいに丁寧でオーソドックスなパターン通りに
各シーンはつなげなければならないのです。

では、具体的にどうすればいいのでしょう?

いろいろな方法がありますが、ここでは大きく4つに分けて解説します。




話や場面が、大きく変わるときの画面構成

アニメが始まったときの最初のシーンとか、ストーリーが一段落して
新たな展開となるようなときの画面構成です。


一番オーソドックスなのが、
『舞台となる場所をロングで(全体の風景を遠くから)撮る』
というやり方です。

学園物なら学校が見える普通の町並みを
時代劇なら天守閣が見える城下町を
宇宙物ならコロニー内部の映像をロングで見せるのです。

これなら観客は、これから始まるアニメがどういう世界での話なのかを
しっかりと理解出来ます。

ただし、これは時間がすごく重要です。
基本的には、観客全員が何が映っているのか理解出来るように
じっくり時間をとらないといけないのですが、
長すぎると、勘の良い人には退屈な作品に見えてしまいます。
早くても遅くてもダメですから、注意して下さい。

(理想を言うなら、時間をとっても観客が退屈しないネタを入れましょう)




話や場面が、少し変わるときの画面構成

こういう場合に一般的なのが、
『キャラクターや場所に、遠くから近寄って撮る』
というやり方と、

『キャラクターや場所をアップで撮り、そこからロングに引く』
という逆のやり方です。

具体的な例で言うと、「主人公たちの会話場面」→「ギャングが車で悪巧みの相談をしている場面」
とシーンをつなぎたい場合、
そのままいきなり主人公たちの会話からギャングの会話へつないだりしたら
観客は大混乱して、何がどうなったのか分からなくなってしまいます。

こういう場合は、
「ネオンが光るケバケバしい繁華街」→「走ってくる黒塗り高級リムジン」→「車内の会話」
と、つなげるか、
「サングラスをかけた悪役顔のアップ」→「豪華な車内」→「繁華街を走るその車にかぶって会話」
と、つなげると、観客が混乱しにくくなります。

アニメでも漫画でも映画でも同じですが、
作者は、次の場面がどんな場所で、どんなキャラクターが出てくるのか、当然ながら知っています。
そのため、「このくらいみんな分かるだろう」と思ってしまいがちで
その場所や状況を説明せずに、ストーリーのみを進ませる画面構成にしてしまうことがあります。

現代の日本が舞台なら、それでもなんとかなることもありますが
SF物とかで、ぶっ飛んだ世界でぶっ飛んだキャラがぶっ飛んだ行動をしている場合など
画面構成をしっかりやっていないと、作者以外、誰にも内容が分からない作品に
なってしまいかねません。

どれほどストーリーやキャラや動きがすばらしかったとしても
『画面構成がダメなアニメ』 = 『誰にも理解されないアニメ』 = 
『駄作』
です。

作ったアニメの感想で、「わけが分からない」と言われた方は
まず、画面構成を考え直してみて下さい。




話が続いていて場面が変わるときの画面構成

画面構成において最も大切なことは、観客に、今どこで誰が何をやっているのかを
分かりやすく伝えることです。

それには、いきなり新しいシーンを入れるのではなく、
『前のシーンとつながっている(関連性がある)』
ことが、最も良いと言えます。

例えば、お互いが切磋琢磨している主人公とライバルがいて
主人公側のシーンが終わって、ライバル側のシーンに移るとき
ただ、シーンを切り換えるのではなく
主人公に「あいつ、どうしてるかなぁ・・・」と語らせてから移ると自然につながります。

また、会議とかで「ヤツの動きはどうだ?」「実は、・・・・・」「なんだと!?」
とかいうやりとりの後、「ヤツ」のシーンにつなげるのもよくある手法ですね。


その他、キャラクターの『視線』に合わせてシーンを切り換えるという方法もあります。

「子供が地平線に何か見つける」→「飛んでくる飛行機」→「飛行機内部」
と、つなげるようなやり方です。

このように、キャラの
『会話』とか『視線』によりシーンをつなげるのは
映像をやっている人には古典的な基本技とも言えるものなのですが
基本が出来ていなければ、進化はありえません。

しっかりと自分のものにして下さい。




変則的な画面構成

ストーリーはつながっていないけど、『画面的』につなげるやり方です。


ちょっと分かりにくい言い方ですが、
『前のシーンと連想ゲームのようにつなげる』
やり方ですね。

「ミサイルが飛んできて大爆発」→「画面真っ白」→「カメラが引くと車のライト」→「主人公が乗っている」
とか、
「主人公が持っている携帯」→「携帯の表面の柄のアップ」→「カメラが引くと服の柄」→「ヒロインの服」
とか、
「車が走って来てバンパーのドアップで停車」→「カメラが引くとバンパーが宇宙船の部品」→「宇宙戦争」
というやり方です。

このやり方は、うまくいくとすごく効果が上がるのですが
変なところで使ってスベると、かなり恥ずかしいことになってしまいます。(^▽^;

やりすぎないように注意して下さい。




蛇足

実は筆者は学生時代、某映画研究会に所属して
16ミリの自主制作映画を作っていたことがあるのですが
そこである先輩が作った、学生紛争で学生と警官隊とが殴りあうシーンや
ラブシーンや車が走るシーンや枯れた花や手書きのパラパラアニメなんかが
ランダムに出てくる意味不明の3時間越えの作品があり、
それを見るのは苦痛以外のなにものでもありませんでした。_| ̄|○

「自分が楽しんで作る」、という姿勢も大切なのですが、
みなさんは、ぜひとも
「みんなに楽しんでもらう作品を作る」
という気持ちを忘れずにいて欲しいと思います。


それと、ここで「シーンのつなぎ方」を『画面構成』と呼んでいますが
それはこの映画研究会や私の友人内での言い方で
現在のアニメや映画の制作会社すべてで、こう呼んでいるわけではありません。
場所によっては、『カット割り』とか『絵コンテ』とか『カメラワーク』とか『演出』とか
呼ばれていますから、注意して下さい。




+ LESSON-5 +

動きのタイミングを調整しよう

+LESSON-1+で、絵による動きのタメを解説しましたが、これと同じ効果を
インターバルを調整することでもやることが出来ます。




ではまず、こんな感じで「ジャンプするキャラクター」を描いてみよう。
キャラクターは何でもいいよ。
犬でもブタでも好きな漫画のキャラクターでもいい。
一番描きやすい絵で描こう。
(でも棒人間はやめておこう、絵の練習にならないし)


(※青い線は前のコマの透かし。)
2コマ目
グッと腰を屈めて…
3コマ目
更に深く…
4コマ目
更に更に深く!
5コマ目
ジャンプ!
6コマ目
昇って…
7コマ目
勢いが緩み…
8コマ目
頂点!
9コマ目
落下して着地!
10コマ目
体制を立て直し最初に戻る




こんなのが出来たかな?



+ジャンプするキャラクター(10コマ)+

インターバルは、すべて『12』にしています。
ですからこの場合、すべての絵は同じ速度で変わっていきます。

 


これはこれで良いんだけど、少し動きが単調なところがあるから
もっとタメた動きにしたいと考えたとき
+LESSON-1+みたいな調子で、絵を描きかえるという方法もあるけど
今回はインターバルを調整してみよう。

つまり、早く動いているところは表示時間を短く
ゆっくりした動きのところは逆に長くするのです。




インターバル調整後



1コマ目と3コマ目をインターバル『13』にして少し長く
4コマ目と9コマ目をインターバル『18』にしてすごく長く
それ以外のインターバルを『10』にして短くしました。

 


調整した方が、動きにメリハリが出て効果が上がります。

1コマ1コマ設定して行くのは大変かも知れないけど、
工夫次第で作品の表現の幅が大きく広がるよ。
とっても大事な事なので頑張ろう!
(ただし、あまりやりすぎると不自然になるから気をつけて)




+ LESSON-6 +

オリジナル作品を作ろう

ある程度技術が付いたら、オリジナル作品を作るようにしよう。

特にストーリー物に挑戦するならば、パロディも良いけど
なるべく自分のオリジナルキャラクターで、オリジナルなネタで勝負したほうが価値がある。

オリジナルキャラクターっていっても、
その辺に居る普通のオヤジでも野良犬でも何でもいいよ。

アニメーションで表現できる幅は計り知れない。
自分なりの新しい表現を見つけてみよう。

どんな物を作るのかも全て自由。どんどん新しい物を作って行こう。

お手本になる作品は、そこら中に転がってるよ。
Web上にも凄い作品がゴロゴロしてるし、テレビアニメや、
実写映画で本物の動きを参考にするのも良い。

「見て面白い作品」を作ってどんどん投稿し、みんなに見てもらおう!




+ EasyToon プラスαへ +



+ 超上級講座 まとめ +


 動きの早さに、緩急をつけよう

 リアルにしても、自然に見えるとは限らない

 デッサン狂い防止の呪文は(ctrl + shift + X)

 画面構成(各シーンのつなぎ方)は、観客は設定を知らない、ということを忘れずに

 作った作品の動きが単調と感じたら、インターバルを調整してみよう

 なるべく作品は、オリジナルのキャラクターとストーリーで勝負しよう
 


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